日本の教育機関との連携

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ボーイングは教育分野においてもさまざまな活動を展開しています。1953年に日本に進出して以来、半世紀以上にわたって日本の産業界との協力関係を維持・強化してきました。ボーイングは、国の明日を築く若い力を支援するのも、日本の企業市民としての重要な役割であると認識しています。

これまでの主な活動は以下の通りで、大学生と小学生を対象としています。

Talent Pipeline Development Program
ボーイングは世界各国の高等教育機関とパートナーシップを組み、企業統治やインテグレーション、データに基づく分析などを通じて学生の能力開発を支援しています。Talent Pipeline Development Programはこうした世界的な戦略をリードする取り組みで、日本国内では東京大学、東北大学、名古屋大学を教育機関パートナーとして選び、カリキュラムや研究プロジェクトの強化を目的に支援しています。

大学生のエクスターンシップ・プログラム、サマー・セミナーなど
毎年4月から9月にかけて実施しているエクスターンシップ・プログラムでは、ボーイングの社員が東大、東北大、名古屋大、金沢工業大、九州大の学生たちを対象に講義を行っています。学生たちはその間にプロジェクトに取り組み、研修結果を9月のサマー・セミナーで発表して成果を競います。このほかにもボーイングは、毎年夏に開催される一般社団法人日本航空宇宙学会主催「全日本学生室内飛行ロボットコンテスト」を支援しています。同コンテストには海外学生チームを含む50を超える学生チームが参加し、各チームが設計・制作した200g以下のオリジナル飛行ロボットの飛行性能をアピールします。

小学生対象のSTEMプログラム
2015年からは小学生を対象に、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(エンジニアリング)、Mathematics(数学)の分野における教育支援「STEMプログラム」をスタートしました。航空宇宙産業の集積地である東海地域の三重県庁、科学技術館(東京)、東レ、ANA、航空博物館(米シアトル)とのパートナーシップのもと、2015年9月下旬に三重県と東京都の計3カ所で開催しました。同プログラムは大好評を得て、2016年には規模を拡大し、東北から東海地域まで日本全国計7カ所で開催する予定です。

日本の教育分野におけるボーイングの貢献
日本におけるボーイングの産学連携活動について、実際に日本の大学で教鞭を執る先生方にその成果やご意見を尋ねました。


学生が航空機産業に強く興味を持つきっかけになっています

中村裕子氏
東京大学総括プロジェクト機構航空イノベーション総括寄付講座 特任助教
aviation.u-tokyo.ac.jp
中村裕子氏

研究分野について、一般の方々にも分かりやすくご説明ください。
私は航空イノベーション総括寄付講座というところに所属していますが、まず、同寄付講座の代表であり、また東京大学工学系研究科航空宇宙工学専攻の教授である鈴木真二先生の研究テーマからご説明します。鈴木先生は飛行中の安全性を高める研究をしています。飛行中に航空機になんらかの故障があって安定性を失った場合には、パイロットが知識や経験をもとに原因を探り、対処しなくてはいけません。鈴木先生たちの研究では、パイロットに頼らず人工知能を利用して、機体が故障の原因を究明し、自動的に制御を行い、安定飛行できるよう研究しています。2011年には模型飛行機を利用し、主翼の3分の1を切り離しても鈴木先生たちの飛行制御方法にて飛行を維持できることを確認しました。その後、JAXAの実験航空機を利用して、重心が後ろに急激に移動する危険な状況を想定し、実機による飛行実験にも成功しました。
航空の旅が、より安全なものになるよう、故障しても安定飛行を保てる飛行機を目指しています。
私自身は、研究室で発見されたイノベーションの卵が、世の中に出て社会に貢献できる仕組みを解明するイノベーション学を研究しています。技術がいくら優れていても、それが市場に出て普及し、目指していた効果を発揮するには、産業構造・社会情勢・政策・既存インフラ等多くの相互作用を経てからになります。航空機産業には、乗客の快適性や運行コスト・環境負荷へのさらなるイノベーションが求められていて、新しい材料や次世代ジェット燃料などが日々研究されています。研究室の努力が、社会につながるよう、過去のイノベーション普及の分析や、対象分野に関する国内外の関係者分析・政策動向を俯瞰的に研究し、道筋を示すことを目標にしています。

ボーイングとの協力関係はいつごろ、どのように始まったか、経緯を簡単にご説明ください。
2008年ごろ、ボーイング ジャパンの方から、学生の教育に貢献できることはないかとのお話をいただき、これまでのカリキュラムではなかなか学生に教えることのできなかった、航空機をビシネスとして総合的に捉えること、技術を理論として捉えるだけではなくユーザーの抱える問題をいかに効果的に解決に導くかユーザー視点を持つことを学べるゼミを、ボーイング ジャパンだけでなく日本滞在中のエンジニアをはじめとする社員の方の協力を得て開講することになりました。その後、ゼミは拡大され、エクスターンシップになって多くの大学の学生と交流できる場にもなりました。

ボーイングによるエクスターンシップによってこれまでにどのような成果がありましたか。具体的なエピソードを交えてご紹介ください。
エクスターンシップでは、航空工学ではなく航空機ビジネスを学びます。航空機ビジネスを考える上で重要な視点──技術の先進性よりも、顧客のために製品や引き渡し後のサービスはどうあるべきなのか、地域社会や環境のために、ものづくりはどうあるべきなのか──は、他のビジネスでも重要なことで、“航空は航空宇宙工学専攻の学生のもの”という苦手意識や距離感を感じていた他学科の学生たちが積極的に参加できる環境であり、エクスターンシップの目玉であるプロジェクト提案では、分野横断型の議論が活発に行われます。本プログラムに参加した学生は夏休みを利用して、航空会社やサプライヤーへの訪問を企画するなど、航空機産業に強く興味を持つきっかけになっています。

今後の若い世代の研究者に期待するのはどのようなことでしょうか。
技術の進歩は速く、さらに情報量も膨大で、どの分野でもその発展に高い専門性が必要とされます。しかしながら、一つの分野をとことん掘り下げると同時に、その分野が関係するビジネスを理解する、つながりを持ち続けることが、イノベーションを起こすためには必要不可欠だと思います。航空機ビジネスにはさまざまな研究分野が関係しており、航空機サービスはさまざまな人の生活や夢に欠かせない存在になっています。学生のうちに、自分の所属にこだわらず、いろいろな授業、それも産業や社会に関するプロジェクトに関わることで、将来の研究の種をたくさん集めてほしいと思います。

その他、教育というテーマに関して、ボーイングに対するご意見・アドバイスがあればお聞かせください。
Talent Pipeline Development Programに、東大は参加しています。これまで、本プログラムのサポートにより、学生たちは、飛行機ロボットコンテスト等に参加したり、国内外の航空会社や航空機関連企業を訪問したりしてきました。キャンパスを出ての競争や交流は、ものづくりに強い興味と動機をもたらすのに、大変効果的と感じています。今後も、ボーイング内外での取り組みの中で学生でも貢献できることがありましたら、ぜひ、学生の参加の機会を広げてくだされば幸いです。

(2016年7月)

 

何かを創る、社会を変えていく情熱を持つ若者に期待

和田直人氏
東北大学流体科学研究所 特任教授
理学博士
www.ifs.tohoku.ac.jp/~Boeing/
和田直人氏

先生の研究分野について、一般の方々にも分かりやすくご説明ください。
私の現在の研究分野は、「国際共同研究・共同教育の推進」です。今は主として下記のような活動を重点的に行っています。

  • Boeing Higher Education Programによる工学研究科・工学部をはじめとする東北大学の大学院生・学部生が良きエンジニアとして、将来、社会に貢献していくための実務教育・総合教育
  • 高いレベルの国際コンフェレンスや国際学会を定期的に開催することにより、若手研究者が国際共同研究を行いながら、将来の学会・産業界の指導者として成長していくことを支援する活動
  • フランスのUniversity of Lyonと東北大学が共同で博士課程の学生を指導して学位を取らせるDouble Degree Programの推進
  • フランスのUniversity of Lyon、スウェーデンのKTH Royal Institute of Technology、ドイツのUniversity of Saarland、中国の清華大学や西安交通大学等と協力して大学院生のサマースクール(10日間)を毎年開校することによる、日・仏・独・中国等の大学院生の国際共同教育

ボーイングとの協力関係はいつごろ、どのように始まったか、経緯を簡単にご説明ください。
2010年、ボーイング ジャパンの代表団が「東北大学との共同研究の可能性探索」のために東北大学を訪問しました。当時私は東北大学産学連携推進本部副本部長をしており、その代表団の応接に当たりました。これをきっかけに、ボーイング・リサーチ・アンド・テクノロジーやボーイング ジャパンの多くの方々と交流することとなり、ボーイングと東北大学の研究者の間の共同研究のプロモートを行い、また、ボーイング ジャパンの小林部長(政府関係・渉外担当ディレクター、小林美和)やボーイング・リサーチ・アンド・テクノロジーのスティーブ ハーン氏(Steven E. Hahn, Director of Japan Enterprise Technology Programs, Boeing Research and Technology)との協力の下で、Boeing Higher Education Programの運営により「より多くの学生(学部生、大学院生)がより良いエンジニアとなるように教育する」事業や、この後に述べるボーイング・エクスターンシップ・プログラムによる事業を行ってきました。

ボーイングによるエクスターンシップによってこれまでにどのような成果がありましたか。具体的なエピソードを交えてご紹介ください。
昨年までのボーイング・エクスターンシップには、東北大学から4〜8名と比較的少数の大学院生が参加していましたが、今年(2016年)は、大学院工学研究科修士課程1年生を中心に集中講義を聴講した学生33名、それに続く学生プロジェクトに参加した学生16名と、多くの学生がこのボーイング・エクスターンシップに参加しています。学生プロジェクトの「仙台空港の活性化と防災センターとしての活用」は2016年9月開催のボーイング・サマーセミナーや宮城県内各所での発表会で高い評価をいただきました。大学院生・学部生にとって、ボーイング・エクスターンシップで聞く講義は航空業界の現状とグローバル企業の経営実態を垣間見る貴重な経験となります。この経験に触発されて、将来の進路として、宇宙航空・航空機業界を志望することになる学生も多いです。集中講義に続く学生プロジェクトの実践は、学生にとってインスピレーション発揮を必要とし、彼等が指導者(私)や仲間の学生と協力して考え方を整理しまとめ、創り上げていく絶好の機会となっています。

今後の若い世代の研究者に期待するのはどのようなことでしょうか。
日本だけではなく世界的に見て、昨今の若い研究者は、思考の範囲、テーマ設定の範囲が限定されていて狭く、ブレークスルーを生み出しにくい状況にあります。こうした傾向は特に東北大学において顕著であるわけですが、これは、彼らの興味の範囲が、自分や上司としての教授の直近の興味に限定されて狭く、また実際に何かを創る、あるいは、社会を変えていくというパッションを持てていない状況にあるからだと思われます。こうした状況を打破するために、現在私が力を入れて行っていることは、できるだけ多くの若い世代の研究者・学生に、ボーイングの人たちの飛行機造りへの情熱や、飛行機のような社会生活に必須の製品を世界の人々と協力して造り安全に運航している実態、会社や同僚への深い敬意と愛情等に触れてもらい、将来、視野を広く持って、社会に役立つ意味のある仕事や研究をするように教育することです。

その他、教育というテーマに関して、ボーイングに対するご意見・アドバイスがあればお聞かせください。
ボーイング・エクスターンシップとBoeing Higher Education Program で実践している教育の理念と活動は大変素晴らしいものです。ネット社会に生きる今の日本の学生・若者たちは、「何でも手軽に手に入る、簡単に答えが見つかる、実際に汗水流して苦労しなくても安直に暮らしていける、面倒なことは誰かがやってくれる」と考えがちです。「世界の人と協力して飛行機を造って、世界に供給し、長時間事故なく安全に運航させ続ける、ということがどのように行われているのか」を、学生・若者が知り、学んでもらうことで、彼らの将来の生き方、Decision Makingの参考にしてもらうことができます。ぜひ、今の活動を続けていっていただきたいと思います。

(2016年7月)